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現場が変わる研修 |研修後に自走できる状態にするには

目次

「研修をやっても現場が変わらない…」そのモヤモヤを終わらせる“最初の5分”

「研修は毎年やっている。資料も揃っている。講師の評価も悪くない。
でも――現場が、変わらないんです。」
大企業の教育担当の方や、中堅企業の社長・管理職の方から、私はこの言葉を何度も聞いてきました。

食品容器製造、精密金属加工、印刷、システム開発、商社、食品、電子部品。
業種は違っても、悩みの“芯”は驚くほど似ています。
研修室の前方では、講師が熱心に説明している。
受講者はうなずき、メモもしている。
アンケートには「分かりやすかった」「参考になった」と並ぶ。

ところが数週間後、現場に戻ると…
声がけも、相談も、改善提案も、いつものまま。
安全意識や品質意識を上げたいのに、日常の会話の“型”が変わらないから、行動が変わらない。ここで多くの人が「内容が足りないのかな」と考えます。
専門知識を増やす。

事例を増やす。
スライドを増やす。
テストを入れる。
もちろん、それも大事です。

でも私は、もっと手前に“ボトルネック”があると考えています。
それが、研修の最初の5分です。

研修を、私はよく畑にたとえます。
種(内容)がどれだけ良くても、土がカチカチなら根が伸びません。

水(やる気)をかけても、表面を流れて終わります。
最初に必要なのは、種の説明よりも、土を耕すこと。
つまり、受講者が「学んでみよう」「話してみよう」と思える空気をつくることです。

私はそこを偶然に任せません。
設計します。
私の研修は「最初からトップギア」と言われることがあります。
意図はシンプルです。受講者を“聞く人”から“考えて話す人”へ切り替える。

そのスイッチが入った瞬間、研修は別物になります。

私は冒頭で、いきなりこう投げます。
「それでは、いきなりですが、テキストに出ている物語を読んでみてください。
そして、思ったこと・感じたことをチーム内で話しましょう。正解はありません。
思ったことを言葉にしてください。時間は5分!よーいスタート!」

たったこれだけで、空気が変わります。
受講者は“評価される場”ではなく、“考えを出していい場”だと感じ始める。
チーム内で「この登場人物、うちの現場に似てない?」「自分ならこう言うかも」と言葉が出始める。
アンケートでは9割以上が「楽しかった」と答え、「引き込まれた」「惹きつけられた」「他のセミナーも参加したい」といった声が並びます。

さらに「早速実践したら、話し方が変わりましたねと言われました」「言葉が少なかったリーダーが、笑顔でメンバーに接するようになりました」「社員が“仕事が楽しい”と話してくれるようになりました」こんな変化の報告も出てきます。

そして私は、必ず受講者の周りを歩きます。
何を話しているかを徹底的に聞きます。
ここが、私にとっては“運用の心臓部”です。
「読みにくいですよね。すいませんね。でも、しっかり理解してくださいね。」
 「面倒くさいですか(笑)!ストレートに来たな~」



こうやって、その場の本音を拾い、共感し、笑いで緊張をほどき、もう一度「理解する」という目的に戻す。
すると受講者は「自分だけが困っているわけじゃない」と感じ、安心して読み直す。
会話が途切れず、むしろ深くなっていきます。
この最初の5分の設計は、気合いでも才能でもありません。

背景には、はっきりした科学的な筋道があります。
まず、心理的安全性です。
心理的安全性とは、簡単に言えば「この場で発言しても大丈夫だ」という感覚。
チーム研究では、心理的安全性が高いほど、質問・相談・フィードバック要求・エラー共有といった学習行動が増えることが示されています。

言い換えると、心理的安全性は「学びを起こす土壌」です。
私は研修の冒頭で、その土壌づくりを最優先でやっています。

次に、動機づけの観点です。
人は“やらされ感”が強いと黙ります。
逆に、「自分で選んでいい」「自分の言葉で表現していい」と感じると関わり始めます。
自己決定理論では、動機づけの基盤として自律性・有能感・関係性の3つが重視されます。冒頭で「正解はありません」「思ったことを言葉にしてください」と言うのは、受講者の自律性を守り、関係性(否定されない安心)をつくり、話すことで有能感(分かってきた感)を育てるための設計です。

そして、もう一つ。
研修が「分かった気」で終わる落とし穴があります。
人はスラスラ理解できたように感じると、それを「本当に理解できたサイン」と取り違えやすい。
これを説明する枠組みの一つが処理流暢性です。

見た目が整っていて読みやすいほど、気持ちよく進み、その気持ちよさが判断に影響することが知られています。
だから私は、あえて読みやすさを揺らすことがあります。
読みづらさは“成績を魔法のように上げる薬”ではありませんが、少なくとも「ちゃんと理解しよう」「確認しよう」というスイッチを入れやすい。
学びの場で必要なのは、気持ちよく流れることではなく、要所で立ち止まることだからです。

ここまで揃うと、研修は「講師が話す場」から「受講者が学ぶ場」に変わります。
私は研修を、知識の搬送ではなく、現場が自走するための“エンジンのかけ方”だと捉えています。

エンジンは、燃料(知識)だけでは回りません。
空気(安心)と火花(問い)と圧縮(集中)が揃って、初めて動き出す。
だから私は、最初の5分に全力を注ぎます。
この5分が、30代〜40代の管理職候補に「話す」「聴く」「まとめる」「試す」という筋肉を思い出させ、研修後に「話し方が変わりましたね」と言われる変化につながっていく。

研修が終わってから現場が動き出すのではなく、研修の冒頭で、すでに“現場が動き出す芽”を出す
ここが、私の研修設計の出発点です。 


次世代リーダー育成研修|ナレッジリーン

ナレッジリーンは国や地方自治体を顧客として環境分野の調査業務や計画策定、企業の非財務分野に対するマネジメントコンサルティングや人材育成を主業務とするシンクタンク&コンサルティングファームです。

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人が黙る研修から、人が話し始める研修へ
「正解はありません」が空気を変える瞬間

研修の冒頭、私は必ず一度「場の温度」を見ます。
受講者の目線、姿勢、頷き方。

笑いが起きるかどうか。
チーム内の距離感。
30代〜40代の管理職候補の方々は特に、表情は穏やかでも、内側では“評価”に敏感です。
これは真面目さの裏返しでもあります。

ある会社でのことです。
テーマは「心理的安全性をコアにしたコミュニケーション改善」。
参加者は管理職候補。
現場の実務も背負い、部下も持ち始め、上からも期待される立場です。
私は最初に短い問いを投げました。

「最近、部下との会話で『しまった』と思った瞬間、ありますか?」

…静かでした。
目は合うのに、言葉が出ない。

いわゆる“優等生の静けさ”です。
研修としては危険信号です。
ここで講師が、内容を丁寧に説明し始めると、さらに静かになります。
受講者は「正解を当てにいく姿勢」になり、間違えないように慎重になります。
すると、学びは“頭の中”で止まり、現場に持ち帰られません。



私はそこで、こう言いました。
「今からは、正解を当てる時間ではありません正解はありません。思ったことを、そのまま言葉にしてください。 言い方がまとまってなくても大丈夫です。むしろ、そのままが材料になります。」

その瞬間、最初の一人がぽつりと話し始めました。
「…たぶん、言い方が強かったです」
すると隣が笑って、「分かる。私もそれ」と続く。

別の席から「私は逆に黙っちゃう」と声が上がる。
気づけば、部屋の空気が“凍った湖”から“流れる川”に変わっていました。
水が動き始めると、そこに学びが乗ります。

私はこの状態を作りたいのです。
ここで起きていることは、根性論ではありません。
とても人間らしい心理メカニズムが働いています。
人が研修で黙る最大の理由の一つは、評価される不安です。
 

「変なことを言ったらどう思われるだろう」
「上司が同席していたら、なおさら危ない」
「知識が足りないと思われたくない」
 こうした“見えないブレーキ”を心理学では評価懸念と呼びます。

評価懸念が強いと、人は発言や行動を抑え、無難に振る舞おうとします。
専門文献でも、評価されることへの懸念が反応を抑制しうることが整理されています。

だから私は最初に、評価の土俵そのものを外します。
「正解はありません」という一言は、受講者にとって「ここは試験会場ではない」という合図になります。

つまり、ブレーキを緩める“解除キー”です。
解除キーが入ると、次に必要になるのはアクセルです。
私はそのアクセルとして「思ったことを言葉にしてください」を置きます。
言葉にした瞬間、思考は外に出て、チームの共同作業になります。
このとき、心理的安全性が立ち上がります。

心理的安全性とは、簡単に言えば「発言しても大丈夫だ」という感覚です。
「恐れのない組織」(英知出版刊)の著者エイミー・エドモンドソンの研究では、心理的安全性が高いチームほど、質問したり、助けを求めたり、ミスを共有したりする“学習行動”が増えることが示されています。

研修の場でも同じです。

心理的安全性が立つと、受講者は「黙って正解を待つ人」から、「確かめながら学ぶ人」へ切り替わります。

ただ、心理的安全性は「優しい雰囲気」だけでは作れません。
ここで重要になるのが、自律性です。
人は、指示されて動くときよりも、「自分で選んでいる」と感じるときに、学びが深くなります。

自己決定理論では、人が内側から動くための土台として、自律性・有能感・関係性の3つが重要だとされます。

「正解はありません」は自律性を守ります。
「思ったことを言葉に」は有能感を育てます。
「チーム内で話す」は関係性を育てます。

だから、あの一言は単なる“優しい言葉”ではなく、動機づけのスイッチが同時に入る設計になっています。
ここで、管理職候補の方々の現実に目を向けると、さらに意味がはっきりします。
30代〜40代の管理職候補は、「自分が正しいことを言う」より、「チームを動かすこと」を求められ始めます。

品質も安全も、答えは資料の中にあるのに、現場が動かない。
会議では“沈黙”が起きる。
問題が起きても、報告が遅れる。
改善提案が出ない。

そういう“症状”の多くは、知識不足ではなく、話せない空気、つまり心理的安全性の不足から起きます。
だから私は、研修の場でわざと「話しても大丈夫」を体験させます。
体験があると、現場で再現できるからです。

たとえば受講者から、こんな言葉が出ました。
「自分の考え方と他人の考え方があり、その違いを知る機会になりました。チームをまとめる時のノウハウを知れました」
「早速実践したら、話し方が変わりましたねと言われました」
「今まで責任感が強く言葉が少なかったリーダーでしたが、笑顔でメンバーに接するようになりました」
「社員が、仕事が楽しいと話してくれるようになりました」

これらは、知識を覚えた成果というより、空気の扱い方が変わった成果です。
人は、空気が変わると行動が変わります。
行動が変わると、結果が変わります。
だから私は、研修を“情報提供”ではなく、“空気設計のトレーニング”として作っています。

関連記事:これこそが本当の人材育成| 人材育成は「設計」ではなく「考え続けるプロセス」

もう一つ、私が冒頭で強く意識しているのは、受講者の脳が「守り」から「学び」へ切り替わる瞬間です。
守りの状態では、脳は失点を避けようとします。
減点されないことが優先です。
すると発言は細くなり、当たり障りのない言葉だけが残ります。

 一方、学びの状態では、脳は加点を取りにいきます。
「未完成でも出してみよう」「確かめてみよう」に変わります。
私が「正解はありません」と言うのは、この切り替えを起こすためです。
いわば、会場のスイッチを「監査モード」から「改善モード」に切り替える操作です。
そして私は、寄り添いを“感情のケア”で終わらせません。寄り添いには、次の一手があります。

「その感想、いいですね。どこが引っかかりました?」
「今の一言を、現場の会話にすると、どう言い換えます?」
「明日一つだけ試すなら、どれをやります?」

こうして、感想を“行動”に接続します。
これが、現場が変わる研修の条件です。

心理的安全性が高まるだけでは、居心地が良いだけの場で終わることがあります。
だから私は、安心を作りながら、同時に「やってみよう」を作ります。

自己決定理論で言えば、関係性だけでなく、自律性と有能感を一緒に育てる設計です。
研修が最初からトップギアになるのは、派手な演出があるからではありません。
最初の数分で、受講者の中の評価懸念というブレーキを緩め、心理的安全性という土壌を作り、自律性というエンジンに火を入れるからです。

エドモンドソンが示したように、心理的安全性は学習行動を引き出します。
そして学習行動が増えると、会話が増えます。

会話が増えると、現場での“行動の型”が変わります。
私はその変化を、単発の研修でも作ります。
しかし本当に強いのは、この設計を積み重ね、現場の状況に合わせて研修を進化させていくやり方です。

ここから先は、「単発で終わらない設計」に踏み込んでいきます。


チームビルディング研修|ナレッジリーン

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会話が増えると、行動が変わる
“読みにくさ”が引き出す本音とチームの一体感

研修会場で、私はあえて“少しだけ負荷”をかける瞬間があります。
それは、受講者の手元にある文章が、あえて読みにくくしてあるときです。

改行が少ない。
情報が詰まっている。
ぱっと見で「うっ」とくる。
その瞬間、だいたい同じセリフが聞こえます。

「読みにくいな〜…」

私は、その一言が聞こえるのを待っているわけではありません。
でも、聞こえた瞬間に、私は内心で「よし」と思います。

なぜなら、その一言は“学びのエンジン”がかかる前兆だからです。

研修の場で、本当に怖いのは沈黙です。
分かったふりの沈黙。

優等生の沈黙。
評価を恐れて口を閉じる沈黙。

 一方で「読みにくいな〜」は違います。

これは、場が動く合図です。
感想が漏れている。
つまり、心が場に参加し始めている。

私はすぐに近づいて、こう返します。
「そうですよね、読みにくいですよね。すいませんね。でも、しっかり理解してくださいね。」
あるいは、少し笑いを混ぜて、こう言います。
「面倒くさいですか(笑)!ストレートに来たな~」

すると、周囲が笑います。

隣の人が「分かる分かる」とうなずきます。
そして次の瞬間、チーム内の会話が増えます。

「どこが読みにくい?」
「ここ、何を言ってる?」
「つまりこういうこと?」と、確認と翻訳が始まる。

この流れは、私の“雰囲気づくり”の技術でもありますが、同時に、心理学・学習科学で説明できる現象でもあります。ポイントは大きく三つあります。

一つ目は、”読みやすさ”が人に与える錯覚
二つ目は、”適度な難しさ”が注意と対話を生む
三つ目は、”小さな困難の共有”
が一体感を作る
順番に見ていきましょう。

まず一つ目。
人は、文章がスラスラ読めると、それを「理解できているサイン」だと感じやすい。

これを説明する枠組みとして、処理のしやすさ(処理流暢性)と、学習者が「覚えられそう」と見積もる判断(J学習判断)があります。

研究では、教材の見た目や提示のされ方などの知覚的な流暢性が、学習判断に影響しうることが報告されています。

つまり、読みやすい資料は“親切”である一方で、別のリスクもあります。
気持ちよく読めることで、「分かった気」が生まれ、確認が減る。
対話が減る。
すると、現場に持ち帰るときに必要な「自分の言葉への翻訳」が起きにくくなります。
研修が“いい話だった”で終わるとき、ここが一因になっていることがあります。

そこで二つ目。
私はあえて、読みやすさを揺らすことがあります。
ただし誤解してほしくないのは、「読みにくくすれば学習成果が必ず上がる」という単純な話ではないことです。

実際、知覚的ディスフルエンシー(読みにくさ)の効果をまとめたメタ分析では、文章学習において想起や転移の成績が全体として改善するとは限らない一方で、学習時間が増え、学習判断が下がる(=「できた気」が減る)ことが示されています。
ここが、研修設計としては重要です。

 学習判断が下がる。

つまり受講者が「まだ曖昧だ」「確認したい」と感じやすくなる。

すると、行動が変わります。
誰かに聞く。
隣と擦り合わせる。
解釈を出し合う。
言い換える。

この“行動の変化”こそが、私が狙っているものです。
この状態は、「望ましい困難」という学習研究の考え方とも相性が良い。
望ましい困難とは、学習を一時的に難しくしても、長期的な理解や定着に資する可能性がある“適度な難しさ”です。

ただし重要なのは、難しさがやれば乗り越えられる範囲にあること。
難しすぎれば、折れます。

だから私は、読みづらさを入れるとき、必ずセットでやることがあります。
それが、巡回と寄り添いと笑いです。

私は受講者の周りを歩きます。
会話を拾います。
表情を見ます。
そして「読みにくいですよね」と共感しながら、同時に「でも、しっかり理解してくださいね」と目的に戻す。

笑いを混ぜて空気を軽くする。これをやることで、難しさが“ただのストレス”にならず、“挑戦”に変わる。
難しさが望ましい範囲に保たれます。

三つ目は、ここからです。
「読みにくいな〜」という一言が、なぜあんなに場を温めるのか。

なぜ、周囲が「そうだよね」と共感し、一体感が生まれるのか。
私はこれを、よく焚き火にたとえます。

焚き火は、薪(知識)だけでは燃えません。火種が必要です。
火種は、多くの場合、完璧な言葉ではなく、ぽろっと漏れた本音です。
「読みにくい」その小さな本音が火種になり、周囲が「分かる」と薪を寄せ、会話の火が大きくなる。

心理学の研究でも、共有された困難が人と人の距離を縮め、結束や協力に影響しうることが示されています。

たとえば、見知らぬ者同士でも、痛みを伴う体験を共有すると、結束感や協力行動が高まったという実験研究があります。
もちろん研修の“読みにくさ”は痛みほど強いものではありません。
それでも、「みんな同じところで引っかかった」という共有は、場に“仲間感”を生みやすい。

特に管理職候補の方々は、職場では強く見せる立場です。
弱音や戸惑いを表に出しにくい。
その人たちが、「読みにくい」と軽く言える。
周囲が「自分も」と言える。
これだけで、心理的安全性が一段上がります。

そして心理的安全性が上がると、学習行動が増えやすい。
質問する、確かめる、助けを求める、意見を出す。
こうした“学びの行動”が起きる土台になります。

ここまでくると、研修の価値は「理解した」だけでは終わりません。
 受講者は、研修中にすでに“現場に持ち帰れる筋肉”を鍛えています。

  • 分からないことを、分からないと言う筋肉
  • 相手の言葉を、言い換えて確認する筋肉
  • 違いを恐れずに、意見を並べる筋肉
  • 話し合いの中で、結論をまとめる筋肉

だから研修後に、こんな変化が起きます。
「早速実践したら、話し方が変わりましたねと言われました」
「言葉が少なかったリーダーが、笑顔でメンバーに接するようになりました」
「社員が“仕事が楽しい”と話してくれるようになりました」

ここに、研修設計としての大事な視点があります。
行動を変えたいなら、行動を“説明”するだけでは足りない。

行動を“体験”させる必要がある。

会話で学ぶ文化を作りたいなら、研修の中で会話が生まれるように設計しなければいけない。
私はその設計に、読みにくさを“道具”として使っています。
ただし、もう一度言います。読みにくさは万能薬ではありません。
メタ分析が示すように、学習成果そのものを自動的に押し上げるとは限らない。
だからこそ、私は読みづらさを単独で使いません。

巡回し、共感し、笑いで場を整え、「理解する」という目的に戻す。
難しさを望ましい範囲に保つ。
ここまでセットにして初めて、“読みにくさ”は対話の火種になります。

研修の設計は、レバーを引くことに似ています。
読みやすく整えれば、静かに進む。
少し摩擦を入れれば、会話が生まれる。
ただし摩擦が強すぎれば、止まる。
だから私は、摩擦を入れたら必ず油を差す。

油とは、寄り添いとユーモアです。

そして私は確信しています。
安全も品質も、問題解決も、最後に現場を動かすのは、制度でもスローガンでもなく、日々の会話です。

会話が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、結果が変わる。
だから私は、研修の場で会話が生まれる仕掛けを作り、受講者の中に「話していい」「確かめていい」を根づかせます。

それが、現場の自走を促す一歩目になるからです。 

単発で終わらせない。現場が自走し始める
連続支援で「教育が進化」する設計図

単発研修には、単発研修の良さがあります。
短時間で視野が開ける。共通言語ができる。
チームの空気が一度リセットされる。
火種が入る。

実際、単発でも「話し方が変わりましたねと言われました」「リーダーが笑顔で接するようになりました」といった変化は起きます。

けれど、現場の自走。
つまり、研修が終わっても勝手に改善が回り続ける状態まで持っていくには、もう一段階、設計が必要です。
私はここを、こう考えています。

単発研修は「点火」。
連続支援は「燃焼の仕組みづくり」。

たとえば、薪ストーブを想像してみてください。
最初に火をつけることはできる。

でも、薪の置き方や空気の取り込み方が合っていなければ、すぐ消えます。
逆に、空気の通り道ができていれば、誰が触らなくても炎は安定します。
現場の自走とは、まさにこの「空気の通り道」ができた状態です。

私は、連続で研修や現場支援を行う場合、必ず“ある習慣”を組み込みます。

それは、セミナーや支援のあと、教育推進担当の方や経営者の方と話をして、内容をフレキシブルに変えていくことです。

回数は17回規模になることもありますし、中には継続しながら教育内容そのものが進化していく会社もあります。
ここが、結果が「一過性」で終わらない理由です。

研修は、教材を届けるだけではなく、現場の状況に合わせて“学びの条件”を更新し続ける必要があるからです。

では、なぜ「フレキシブルに変える」ことが、そんなに重要なのか。
 ここにも科学的な筋道があります。

まず、学習科学の視点です。
人は一度聞いただけでは、行動は変わりません。

変わったとしても、戻ります。
忙しさ、慣れ、職場の空気、上司の一言――現場には“元に戻す力”が働くからです。

だから必要なのは、学びを「一回の理解」で終わらせず、時間をまたいで呼び出し、使い、修正する設計です。
記憶研究では、学習を「楽にする操作」が必ずしも長期の定着や転移に結びつかず、むしろ適度な難しさや呼び出しの機会が長期の保持・転移を助けることがある、と整理されています。

認知心理学(学習・記憶)で取り扱う「望ましい困難(desirable difficulties)」は、その代表的な考え方です。

連続支援で私がやっているのは、まさにこの「呼び出して使う」機会を、現場の文脈に合わせて繰り返し設計することです。


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次に、組織・チームの学習の視点です。
現場が自走する会社には共通点があります。

失敗や違和感が、早い段階で言葉になる。
小さな問題が、共有される。
助けを求めることが、弱さではなく、賢さとして扱われる。
この土台になるのが心理的安全性です。

心理的安全性が高いチームほど、質問・相談・フィードバック要求・エラー共有などの学習行動が増えることが示されています。

つまり、研修でいくら「改善しよう」と言っても、現場で学習行動が起きない空気のままだと、回りません。
連続支援の価値は、ここを“現場仕様”に育て直せる点にあります。

そして三つ目が、動機づけの視点です。
連続支援のとき、私が教育推進担当の方や経営者の方と対話しながら内容を変えるのは、単に「カスタマイズして親切にする」ためではありません。
現場が自走するために必要なもの。

それは「やらされ感」ではなく、自分たちで決めて動いている感覚だからです。

自己決定理論では、人が内側から動くための基盤として、自律性・有能感・関係性が重要だとされています。
 連続支援で「状況に合わせて内容を変える」プロセスは、まさにこれを育てます。

  • 教育推進担当や経営者が「現場の今」を語る→現場の課題が言語化される(関係性)
  • 次に何を扱うかを一緒に決める→自分たちで舵を取る(自律性)
  • 実践して、結果を見て、やり方を変える→できる感覚が積み上がる(有能感)

これが積み重なると、「研修を受けた」ではなく、「自分たちで育った」になっていきます。ここに自走の芽があります。

実務的な話も少しします。
連続支援で私が重視するのは、“教材の完成度”よりも“運用の精度”です。

現場は生き物で、毎月、表情が変わります。

安全の課題が表に出る時期もあれば、品質クレームが続く時期もある。
人が入れ替わる。ラインが変わる。組織変更がある。
だから私は、毎回の支援を「固定メニューの提供」ではなく、点検と調整を前提にした“航海”として設計します。

航海では、地図だけ渡しても船は目的地に着きません。
風が変わる。潮が変わる。視界が悪くなる。
その都度、羅針盤を見て、帆を調整して、進路を直す。

連続支援とは、この「進路修正」を学びの中に組み込むことです。
そして、ここが一番大事なところなのです。
フレキシブルに内容を変えるとき、私は「迎合」しません。

現場の気分に合わせるだけでは、何も変わらないからです。
私は必ず、次の二つをセットで扱います。

1つは、現場のリアル
いま何が起きているのか、
会話はどこで止まっているのか、誰が抱え込んでいるのか、どの場面で確認が飛ぶのか。

もう1つは、変えたい行動の焦点
声がけなのか、報連相なのか、指示の出し方なのか、会議の回し方なのか、問題定義の仕方なのか。
焦点が決まると、研修は「いい話」ではなく「次の一歩」になります。

その焦点が定まったとき、受講者の変化は目に見えて出ます。

「他のセミナーも参加したい」
「チームをまとめる時のノウハウを知れました」
「早速実践したら、話し方が変わりましたねと言われました」
「言葉が少なかったリーダーが、笑顔でメンバーに接するようになりました」
「社員が“仕事が楽しい”と話してくれるようになりました」

これらの言葉が示しているのは、知識の追加ではなく、関係性と会話の質の変化です。

自走する現場とは、結局のところ「会話が回る現場」です。
気づきが言葉になる。
小さな違和感が共有される。
問題が大きくなる前に話し合われる。
改善が当たり前になる。

連続支援は、その“回り続ける会話”を、現場に根づかせるための設計です。

私は、単発研修もやります。
でも、もし「研修はやっているのに現場が変わらない」という悩みが深いなら、火をつけるだけで終わらせず、燃焼の仕組みまで作ることをおすすめします。

 研修が「イベント」から「文化づくり」に変わった瞬間、現場は自走し始めます。 

「この先生なら任せたい」と思われる理由
人間性が、学びを現場に根づかせる

私は、よく研修を依頼する側の本音を耳にします。
「テーマは大事。でも、正直どの講師も“言っていること”は似て見える」
「だから最後は、この人に任せて大丈夫か、なんだよな・・・・・」

「今までずっと依頼していた先生もいることだし・・・・・」

この感覚は、とても健全だと思います。
なぜなら研修は、知識を“運ぶ”だけでは終わらないからです。

研修は、人の感情に触れます。
現場の誇りに触れます。
過去の失敗に触れます。
上司と部下の距離に触れます。

つまり、研修は「内容」より先に、講師という“人”が場に影響を与えます。
だからこそ、「この人の話なら採用したい」と思われる人間性が求められる。

研修内容を比較しても決めきれないとき、最後に背中を押すのは“講師への信頼”です。

では、その“人間性”とは何でしょうか。
私は、講師の人間性を「性格の良し悪し」ではなく、受講者とどう接するのかという一貫した姿勢だと捉えています。

反発気味の人が、最後に言った一言

ある研修で、最初から少し反発気味の方がいました。
目もあまり合わない。反応も薄い。言葉も少ない。

こういう方がいると、講師側が“説得”したくなる場面もあります。でも、私は説得しません。

私は、その人を“敵”として扱わない。
反発は、多くの場合「自分を守る反応」です。

守りたいものがある。失点したくない。変化に巻き込まれたくない。
つまり、そこに感情がある。

だから私は、無理に前に引きずり出さず、場の設計で巻き込みます。
正解探しを外し、チームで語れる問いを置き、話していい空気を作る。
そのうえで、受講者の周りを歩いて、何が起きているかを“拾い続ける”。

すると面白いことが起きます。
その方は、私とは目を合わせないままなのに、チームワークの場面になるとリーダー的存在になっている。

チームの議論をまとめ、要点を拾い、方向を整えていく。終盤、その方がふと口にしたそうです。

「いままで受けた研修って、なんだったんでしょうね」

これは、他の研修を否定したい言葉ではありません。
その人の中で、「自分に隠れていたリーダーシップ」に気づいた瞬間の言葉です。

私はここに、研修の価値が凝縮されていると思っています。

人は、能力がないから黙るのではありません。
多くの場合、安心が足りないから、出さないのです。

心理的安全性があるほど、質問したり、助けを求めたり、フィードバックを求めたり、ミスを共有したりといった“学習行動”が増えることは、職場チーム研究で示されています。

つまり講師がやるべきことは、受講者を“評価の場”に置くことではなく、能力が自然に出てくる条件を整えること。

これが私の姿勢です。

人間性は「優しさ」だけでは足りない

誤解されやすいのですが、心理的安全性とは「優しい雰囲気」ではありません。
人間性が問われるのは、むしろここからです。

安心だけでは、研修は“居心地が良かった”で終わることがあります。
現場が変わる研修は、安心を作りながら、同時に「理解しよう」「やってみよう」を作ります。
私は研修の中で、読みにくいテキストを意図的に作り
「そうですね、読みにくいですよね。すいませんね。でも、しっかり理解してくださいね。」
 「面倒くさいですか(笑)!ストレートに来たな~」

ここに、人間性を醸し出そうと心がけています。

共感で守る。
でも、目的に戻す。
ユーモアで緊張をほどく。
でも、学びの負荷は下げすぎない。

これは、受講者を未熟な人として接しない。
大人として尊重している姿勢なのです。

そしてこの設計は、動機づけの理屈にも合っています。

自己決定理論では、人が内側から動くための土台として自律性・有能感・関係性の3つが重要だと整理されています。

「正解はありません」で自律性を守り、「思ったことを言葉に」で有能感を育て、「チームで話す」で関係性を育てる。
私の“寄り添い方”は、甘やかしではなく、動機づけが立ち上がる条件を揃うようにしています。

「教育が進化する会社」をつくる、連続支援という選択

私の研修は、単発が8、連続が2くらいの比率です。
人数は20名規模が中心で、全国出張にも対応する。

連続支援の特徴は、回数そのものではなく、“現場の状況に合わせて教育が進化していく”ところです。
食品容器製造業、食品容器製造器機製造業で、現場・管理・設計・設備管理までが参加し、毎月2回(時に3回・4回)の集合。

最初は問題解決のテクニック中心で進めた。
ところが途中で、解決力よりも「問題検出力」に課題があると判断し、メンタルモデル(ものの見方・気づき方)を組み込むように変えた。

この判断は、私にとってセミナー開発・維持のノウハウです。
目先の「受けが良いメニュー」を固定で売り続けるのではなく、現場を見て、必要な難しさに舵を切る。

しかも、教育推進担当や経営者と対話しながら柔軟に変える。
ここには、成果に対する誠実さを求めるようにしています。

学習科学の観点でも、ここは筋が通ります。
学びは「気持ちよく分かる」ほど、理解した気になりやすい。

処理流暢性(情報を容易に処理できること)が判断に影響する現象は、心理学で広く議論されています。

だからこそ私は、必要なところで立ち止まらせ、確認させ、言い換えさせる。

さらに、知覚的な読みにくさ(ディスフルエンシー)についてのメタ分析では、学習成果(再生・転移)が必ずしも上がるわけではない一方で、学習時間が増え、学習判断(できた気)が下がることが示されています。

私が「読みにくさ」を対話の火種に使い、巡回とユーモアで折れない範囲に調整するのは、偶然ではなく理屈に沿った運用なのです。

そして、学びは“軽い”だけでは定着しません。
 認知心理学では「望ましい困難」は、学習を支える適度な挑戦が長期的な学びに資することを論じています。
 私の連続支援は、現場の現実に合わせて、この“望ましい難しさ”を調整し続ける仕組みになっています。


コミュニケーション研修|ナレッジリーン

ナレッジリーンは国や地方自治体を顧客として環境分野の調査業務や計画策定、企業の非財務分野に対するマネジメントコンサルティングや人材育成を主業務とするシンクタンク&コンサルティングファームです。

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受講者の声が語るのは、内容ではなく「人」だった

受講者のコメントを読ませていただくと
「他のセミナーがあれば、是非参加したいです!」
 「今までやっていたことの他に、知ったりやらなければいけないことがあるとわかり、悩みを解決できそうな気がしました」
 「社員が、どんなに厳しい負担がかかろうとも、協力し合い前向きに取り組んでくれる。それも、嫌がらず笑顔で仕事をしてくれています」

ここにあるのは、知識ではなく、関係性と姿勢の変化です。
そして、研修の依頼者が本当に買いたいのは、この変化です。

現場が自走するかどうかは、結局のところ日々の会話が回るかどうか。

会話が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、結果が変わる。

私は、このようなイメージを持ちながら研修メニューを開発しています。

最後に、正直な話も書きます。
 Web研修は、参加者との対話が極端に減りやすく、一方的な説明が増えがちです。

大切にしている「巡回して拾う」「表情と空気で調整する」が難しくなる。

Web研修には、もちろんメリットがあり、それを最大限活かすことを考えます。
でも、やはり「対面式ライブセミナー」の方が、なんか人間くさくていいなと思っています。

3分動画で、雰囲気と設計思想を見てください
 「研修をやっても現場が変わらない」

その悩みに対して、どうすれば“学びを行動につなげる仕組み”が作れるのか。
その設計ポイントを3分動画にまとめています。

動画タイトル: 「【3分動画】現場の自走を促す『次世代リーダー育成研修』のつくり方」

今回も、最後までお付き合いくださりありがとうございました。  
寒い日が続きます。 次回も元気よくお会いできると嬉しいです。

            毎週月曜日に「改善ファシリテーション」をテーマとしたコラムを更新、
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「チームビルディング」のコラム一覧|ナレッジリーン

「チームビルディング」のコラム一覧です。リーダーであるあなたが「 チーム特性 」を知っていると、今までにない 問題 / 課題解決 に向けたチームワークを形成することができます。

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次世代リーダー育成研修|ナレッジリーン

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マネジメントコンサルティング部 部長
坂田 和則

国内外において、企業内外教育、自己啓発、人材活性化、コストダウン改善のサポートを数多く手がける。「その気にさせるきっかけ」を研究しながら改善ファシリテーションの概念を構築し提唱している。 特に課題解決に必要なコミュニケーション、モチベーション、プレゼンテーション、リーダーシップ、解決行動活性化支援に強く、働く人の喜びを組織の成果につなげるよう活動中。 新5S思考術を用いたコンサルティングやセミナーを行い、企業支援数が190件以上及び年間延べ3,400人を越える人を対象に講演やセミナーの実績を誇る。

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