【EcoTopics】いま始める自治体の生物多様性~「見える化」機能拡充の要点と実務での活用~
9/30、環境省の「生物多様性見える化システム」の機能拡充が行われ、「自然共生サイトみんなの取組」や「自治体ナビ」が追加されて、地域の保全状況の確認がしやすくなりました。
本コラムでは機能拡充の概要と自治体での活用方法について解説いたします。
1.生物多様性に取り組む意義
自治体が生物多様性に取り組む意義は、「自然環境の保全」にとどまりません。
短時間強雨や猛暑が頻発する中、樹林や湿地などの緑地は浸水の緩和やヒートアイランド現象の低減に効果をもたらし、地域の災害対応力を高めます。里地里山や都市の緑は、住民の健康、学習、地域アイデンティティの形成にも寄与し、交流や観光の資源にもなります。さらに、自然と共生する取組(ネイチャーポジティブ)に関心を持つ企業が増えており、地域への投資を誘発する効果も期待できます。
生物多様性は、防災・福祉・観光・産業を横断して支える政策基盤であると言えます。
2.「生物多様性見える化システム」の機能拡充について
国の「生物多様性国家戦略2023–2030」は、陸域・海域の30%以上を効果的に保全する「30by30」の実現に向け、保全効果の可視化と地域連携の強化を重視しています。
環境省の「生物多様性見える化システム」は9月30日に本格運用へ移行し、「自然共生サイトみんなの取組」および「自治体ナビ」などの機能が追加されました。前者は各サイトの最新活動の発信・共有を支援し、後者は自治体ごとの保全目標や現況の把握を容易にします。データの拡充と検索条件の追加により、施策立案や官民連携の検討における利便性が高まりました。
出典:環境省 生物多様性「見える化マップ」 https://www.biodiversitymap.env.go.jp/
3.実務での主な活用場面
「生物多様性見える化システム」の実務での主な活用場面をご紹介します。
(1)優先区域の可視化と未対応区域(空白)の抽出
重要里地里山、保護地域、既存の緑地・水辺などの情報を重ね合わせ、気候変動への適応や生態系ネットワークの観点から、ネットワークの分断箇所や施策未着手の区域(=空白)を明示します。これにより、重点的に対処すべき区域や、ネットワークとしての連結が必要な箇所を把握できます。
(2)指標設定と庁内共有(KPIの運用)
「自治体ナビ」に掲出される指標類を庁内で共有し、進捗管理の共通指標として活用します。関係部局間で目標・現況・達成度を同一指標で把握することで、合意形成と説明責任を強化できます。
(3)官民協働の設計
「みんなの取組」により市民団体・企業等の活動を把握し、自然共生サイトの認定や支援証明と連動させることで、資金や人材の流れを可視化し、協働の枠組みを計画的に構築できます。
4.まとめ~政策基盤としての生物多様性への取組~
生物多様性は、地域の暮らしを守り、将来世代の選択肢を広げる政策基盤です。
「生物多様性見える化システム」の機能拡充は、これまで取りかかりにくかった生物多様性への取組のハードルを大きく下げるものです。
生物多様性の取組の第一歩として、可視化ツールの活用をお勧めいたします。
出典:
●環境省 生物多様性「見える化マップ」
https://www.biodiversitymap.env.go.jp/
●環境省 報道発表 生物多様性見える化システムの機能拡充について
https://www.env.go.jp/press/press_00976.html
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(令和7年11月 公共コンサルティング部 水野)
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