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【EcoTopics】地方公共団体の適応策の見直しに向けて ~第3次気候変動影響評価報告書 地方公共団体が注目すべきポイント~

目次

2023年3月に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「第6次評価報告書統合報告書」の最新の科学的知見を踏まえ、2025年3月には日本の気候変動の将来予測をとりまとめた報告書「日本の気候変動2025」が、2026年2月には分野別の日本の気候変動影響評価結果「第3次気候変動影響評価報告書(以下「第3次報告書」という。)が公表されました。

「第3次報告書」では、前回報告書からアップデートされた現在の状況と将来予測される影響に加えて、『特に強い影響を受ける地域・対象』などの絞り込みのほか、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活分野での細分化された対象項目の追加など、より具体的な適応策の検討へとつながるような工夫がなされています。

本コラムでは、「第3次気候変動影響評価報告書」におけるポイントを、地方公共団体の適応策の見直しの観点でまとめ、紹介いたします。



1.「第3次報告書」の主な変更点

2020年12月に公表された前回報告書から主な変更点を以下に整理しました。


●評価対象項目数の拡大と分野の再編

全7分野は変わらず、大項目の見直しと小項目が71項目から80項目へと増加。

*健康分野:

メンタルヘルスへの影響や、自然災害に起因する健康影響などが追加。

*産業・経済活動分野:

日本標準産業分類やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のガイドラインを参考に、「食料品製造業」「情報・通信業」「運輸業」「不動産業」などが新たに追加。経済損益の予測影響なども。

*国民生活・都市生活分野:

 「健全な生活とその基盤(医療・福祉、飲食、住宅・住居、労働・消費など)」、「精神的な基盤(地域社会など)」、「世代間・世代内公平性(公平性・社会的弱者への配慮など)」として、大項目と小項目が「生活者」の視点で大幅に修正。


●シナリオ別の評価と特に優先的に対応が必要な項目の明確化

*「現状(約1.1℃上昇)」「約1.5~2℃上昇時」「約3~4℃上昇時」の3段階のシナリオ別で重大性を評価することにより、2℃目標達成の必要性を明確化。

*緊急性の評価では、適応策への意思決定が必要な時期「レベル3:できるだけ早く」、「レベル2:概ね10年以内」などを明示。

*『特に強い影響を受ける地域・対象』として、具体的な地域やその影響予測を記載。

出典:気候変動影響評価報告書 総説(2025年度版)環境省


2.「第3次報告書」の評価結果の傾向

●現状で既に大きな影響がみられ、緊急性があきらかに上昇

*農業、水産業、自然生態系、洪水・内水、土砂災害、強風等、暑熱(熱中症等)、メンタルヘルスへの影響、インフラ・ライフライン等で、現状既に「社会・経済・環境」面で特に重大な影響が認められる「重大性:レベル3」。

*前回報告書では、緊急性が高いとされた項目は、71項目中31項目であったが、「第3次報告書」では80項目中54項目に増加。現状で既に重大性レベル2以上で、できるだけ早く追加的な適応策への意思決定が必要な『緊急性』が、全項目「レベル3」となっているのは、「農業・林業・水産業」と「自然災害・沿岸域」


出典:第3次気候変動影響評価報告書(概要資料)環境省


3.地方公共団体が注目すべきポイント

●激甚化する気象災害への対応(自然災害・沿岸域分野)

*内水氾濫のリスク拡大

・下水道の排水能力を上回る内水氾濫は、現状ですでに甚大な被害が発生しており、重大性・緊急性ともに「レベル3」となっており、内水氾濫被害額は、排水不良シナリオ(河川への排水が一切行われないと仮定)では、2031年~2050年において現在気候の約2倍(約19兆円/年)に増加すると予測されています。

・代表的な適応策として、下水道の排水能力の増強、土地のかさ上げ・ピロティ化、内水ハザードマップの整備のほか、逆流防止弁の設置や雨庭の設置、都市のコンパクト化、土地利用規制、道路冠水の予測なども効果的な施策としてあげられています。

*流域治水への移行

・河道掘削などのハード対策に加え、田んぼダムの活用や土地利用規制、ハザードマップの徹底など、流域の全関係者が協働する「流域治水」への移行が急務とされています。

*海面水位上昇と移転の検討

・海岸近くの低平地では、浸水被害人口が将来的に数百万人規模に達すると予測されています。防潮堤のかさ上げだけでなく、浸水予測地域からの移転といった長期的かつ重大な意思決定がレベル3の緊急性をもって求められています。


●暑熱による死亡リスク増加への対応(健康・国民生活分野)

*特に影響を受ける地域と年代

・人口密度の高い大都市圏において、より大きな死亡リスク増加、相対的に寒冷な地域で高齢者死亡率が顕著に上昇していることが報告されています。将来的な予測では、気温の上昇が大きいと予想される北部の都道府県や、人口は少ないものの人口減少が大きい都道府県において、顕著な高温による死亡率(超過死亡数/人口)や罹患率(超過罹患数/人口)の増加が予測されています。特に熱関連死亡と疾病の負担増加は65歳以上でより大きくなることが予測されています。

・近年、熱中症特別警戒アラート・熱中症警戒アラートの運用や施設のエアコン設置、クーリングシェルターの設置などが進められています。エアコンの使用の効果については特に多くの報告があり、2031~2050年の熱中症救急搬送者数は、エアコンの普及などのライフスタイルの変化により約60%減少することが予測されています。


●社会的弱者・要配慮者への支援(世代間公平性・教育分野)

*要支援者への対応

・高齢者施設での浸水被害や避難の遅れによる死亡事例が報告されており、避難行動要支援者名簿や個別避難計画の作成、福祉避難所の確保がレベル3の緊急事項となっています。

*メンタルヘルスへの影響

・自然災害後の不調や、高温による自殺リスクの増加が重大性「レベル3」で評価されており、地方公共団体による相談体制の整備が求められています。


●地域経済(農業・産業)の持続性確保

*水稲・果樹の品種転換

・コメの白未熟粒による一等米比率の低下や、果樹の栽培適地変化が深刻化しており、高温適応性品種の導入や樹種転換は効果発揮までに時間がかかるため、早期の支援が必要とされています。

*中小企業のBCP策定支援

・産業分野では、浸水被害やサプライチェーンの寸断が地域経済に深刻な影響を及ぼすため、事業継続計画(BCP)の策定や施設移転の促進が推奨されています。


4.まとめ~最新の予測を踏まえた適応策の検討へ~

地方公共団体における「地方公共団体実行計画(区域施策編)」や「地域気候変動適応計画」は、計画期間が10年、必要に応じて見直しのケースが多くなっていますが、「第3次報告書」の緊急性レベル3の項目については、10年という期間を待たずして、早急に対応することが求められています。気候変動影響は、自然災害や健康影響など人命のみならず、生活基盤に関わり、これまでの予測結果に基づく対策では十分でないことも想定されます。地方公共団体として、最新の予測情報に基づき、適応策を検討していくことが必要です。

「第3次報告書」の予測・評価結果をもとに各分野の気候変動影響と具体的適応策をまとめた国の「気候変動適応計画」の改定が、令和8年度中に予定されています。国の動向を注視つつ、早期の対策が求められるものについては今から準備していくことで、迅速な施策の執行へとつなげていくことが可能です。



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(令和8年3月 公共コンサルティング部 緒方)




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