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【EcoTopics】地域一体で推進する脱炭素経営 ~地方公共団体と地域支援機関の連携による脱炭素経営支援の必要性~

目次

2050年のカーボンニュートラルの実現に向け大企業から家庭まで全ての主体の取組が求められています。その中でも、国内排出量の約2割を占める中小企業の脱炭素化は、地域の脱炭素推進において重要な鍵を握ります。また、日本全国で脱炭素先行地域などの地域一体での取組が進む中、地域経済の中心である中小企業が脱炭素経営に踏み出すことは不可欠です。

一方、中小企業が自力で脱炭素経営に取り組むにはまだまだ課題も多く、地方公共団体や地域の支援機関との連携が必要です。本コラムでは、地域内の商工会議所、金融機関、支援センター等と連携した脱炭素経営推進の必要性について紹介します。


1.中小企業の脱炭素経営推進における課題

地域の中小企業に対し、脱炭素経営への取組を促すには、現状の課題を正確に把握する必要があります。多くの中小企業では、燃料や電気代、原材料等の物価高騰、人手不足、業務のデジタル(DX)化対応など目の前の経営課題に追われており、脱炭素は必要であると理解はしながらも「優先度の低い取組」と見なされがちです。そのため、支援策を用意しても脱炭素は「優先して取り組むべき課題」ではないとの認識から企業の参加を得るのは容易ではありません。

また、環境省が実施している「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」においても、初動期における中小企業の巻き込みの難しさ(支援体制を構築しても想定ほど企業が集まらず、その後の取組継続が思うようにいかない等)が共通の課題として指摘されています。こうした課題を踏まえ、支援の必要性と連携のあり方を検討していくことが重要です。


2.脱炭素経営支援の必要性

上記の課題がある一方で、中小企業の脱炭素経営を支援し加速させる必要性は以前にも増しています。その理由の一つとして社会的な要請が挙げられます。サプライチェーン全体の排出量(Scope3)の算定・開示義務化が進み、大企業は取引先の中小企業にも脱炭素対応を求めはじめています。脱炭素への取組は企業評価や若い世代の就職先選びにも影響する重要な要素となり、今や脱炭素経営は企業の事業継続に欠かせない条件となりつつあります。

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について(2025年1月31日更新版)」より弊社にて作成

さらに、省エネ設備の導入や生産・物流工程の効率化などの施策はコスト削減とCO₂削減の両方につながります。また、脱炭素対応を強みに新たなビジネスチャンスを創出し、企業価値や競争力向上につなげることも可能です。このように脱炭素経営は「環境のため」に留まらず自社の成長戦略となりえます。そのため、単独で対応が難しい中小企業に地方公共団体や支援機関の積極的な後押しが必要となってきます。

 

3.地方公共団体と地域支援機関の役割

中小企業の脱炭素経営を地域一体で支援するには、地方公共団体と支援機関それぞれの役割分担を明確にし、協働体制を構築していくことが重要です。その中で地方公共団体においては、地域全体の方針を示し、旗振り役としての機能が求められます。そのため、脱炭素の意義を地域の計画に位置付け、必要な予算措置や支援制度を整備するとともに、関係者が集まる協議の場を設けて調整を行っていく必要があります。

一方、商工会議所や地域の金融機関、産業支援センターなどは日頃から多くの中小企業と接点を持ち、関係を築いています。これら地域支援機関においては企業への窓口として、融資相談やセミナーなどあらゆる場面で脱炭素経営を促す役割を担います。また、環境コンサルタント等をはじめとした専門機関においては、各社のCO₂排出量の見える化や削減策の提案といった役割を担います。

このように地方公共団体がビジョン提示と調整役、金融機関・経済団体が企業との接点役、専門家が具体策の提案役というそれぞれの役割分担を行うことで、重複や抜け漏れのない支援が可能となり、地域一体で多くの企業をカバーできる体制が整います。


4.地域脱炭素経営推進体制の構築と連携によるメリット

地域一体での脱炭素経営推進体制構築には、様々なメリットがあります。

 

  • 中小企業

複数機関の支援をワンストップで受けられるため、必要な情報や専門家の助言にスムーズに辿り着けます。また、身近な地域金融機関や商工会議所といった馴染みの窓口から総合支援を受けられることで安心感が生まれ、結果として支援を受けることによりエネルギーコスト削減や取引機会の拡大といった経営メリットも得やすくなります。

 

  • 地方公共団体・支援機関

地域企業の脱炭素化は支援側にも中長期的なメリットがあります。企業の脱炭素経営が進めば地方公共団体は地域のCO₂削減目標の達成、金融機関は融資先企業の事業継続性向上につながります。さらに企業が補助金頼みではなく、自社の利益として脱炭素に取り組めば地方公共団体の財政負担も軽減できます。支援機関同士がノウハウやネットワークを共有することでスケールメリットによる支援効率の向上も期待できます。

 

  • 地域全体

地域企業の競争力維持・強化は地元の雇用を守り、若い人材の流出抑制にもつながります。また、各社の取組が積み重なれば地域全体が環境先進エリアとして評価され、外部からの投資や新規ビジネスの機会を呼び込むことも期待できます。地域一体で脱炭素経営を推進することは環境面だけでなく地域の持続可能な発展につながります。

出典:環境省「地域ぐるみでの支援体制構築ガイドブック」


5.まとめ~地域一体での脱炭素経営への挑戦~

脱炭素経営の地域展開はすぐには達成できるものではなく、地道な取組の積み重ねが不可欠です。地域ごとに「なぜ脱炭素に取り組むのか」という意義を明確に掲げ、中小企業と支援者双方の共感と賛同を得ることが重要です。「地場産業の競争力強化」など地域課題の解決につながる目標を掲げれば、企業も「自分事」として捉えやすくなります。

多くの地域中小企業が参加しやすい工夫を凝らし、産業構造やエネルギー基盤の転換も見据え、長期的視点で取組を続けることが必要です。


  • グリーン・バリューチェーンプラットフォーム

 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/guide.html

  • 地域脱炭素の取組に対する関係府省庁の主な支援ツール・枠組み

 https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/supports/

  • 令和7年度地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業参加団体の公募について

 https://www.env.go.jp/press/press_04893.html



株式会社ナレッジリーンでは、環境・カーボンニュートラルの分野における計画策定支援や、再エネ設備等に関連する調査・事業検討、具体的な削減のための事業も含めて支援を行っております。各種ご相談に応じますのでお気軽にお問合せ下さい。

 

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(令和7年6月 公共コンサルティング部 中平



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