コラム

5S活動の目的とは│「気付き力」の高い人財育成

目次

意味を持った清掃が大切

整理・整頓・清掃・清潔・躾。

これらをローマ字表記したときの頭文字を取って「5S」と呼ばれる活動。
多くの製造業をはじめ、病院介護やサービス業など、幅広く展開されています。

ところが、この活動が「お片付け」で終えてしまい、改善活動やその成果に紐付けしていないケースも少なくありません。
今回は、5S活動についてお話をすすめます。

成果の出る清掃を進めるためのノウハウがここにあります。

5Sで「気付き力」の高い人財育成を

5S活動は、何が目的なのですか?と聞かれたら、私は、「人財育成活動だっ!」とお答えします。
特に、「気付き力」の高い人財育成を実現化します。

「気付き力」とは、Aという事象とBという事象があった場合、この間にあるギャップに気付く力です。例えば、「昨日清掃した時には、落ちていなかったのに、今日清掃したら黒い異物が落ちていた」といった気付きです。

これら気付きが、予防保全や予防処置につながり、重大な事故や故障を回避するのです。
ところが、多くの職場では、この「小さな変化」を見逃してしまい、製品の不具合やポカミスが「なかなか減らない。」といった、悩みを増やしているようです。

私たちの脳は、意識するモノゴトは気付くが、意識していないモノゴトには気付くことができません。
これを「非注意性盲目」といいます。
「非注意性盲目」は、日頃、よく起きている現象です。

私が、様々な職場を拝見させて頂くとき、疑問に思ったことや不具合につながりそうな事象を見つけると、必ず「なぜ?」とたずねます。
先日も、職場の壁に台車がぶつかった様で、穴が開いていました。

そして、「なぜ?穴が開いているのですか?」と質問をしたところ、「言われるまで気付かなかった」や「いつもの風景だと思い込んでいた」といった答えが返ってきます。

つまり、その職場の人には「壁の穴」が見えていなかった様なのです。
「見えていない」現象は、多くの不具合の「種」を見逃します。
ですから、異常の「種」に気付く人財育成はとても大切なことなのです。

5S活動の目的

では、どのように人財を育成すればよいのでしょうか?
そこで登場するのが、5Sです。
5S活動は、捨てたり、拭いたり、並べたりといった活動が展開されがちなのですが、本来目指すべきは「気付く人財育成」です。
特に、リーダーが意識しなければならないことは、清掃時のテーマです。
テーマを持たずに清掃をすると、多くの人は、拭く、掃く、並べるといった行動を取るでしょう。しかしこれでは、「非注意性盲目」が起きやすい状態なのです。

リーダーは
・今日は、壁の穴を見つけながら清掃してみよう!
・今日は、黒い異物が落ちている所を見つけながら清掃してみよう!
・今日は、製品カスが落ちている所を見つけながら清掃してみよう!
・今日は、清掃のしにくいところを見つけながら清掃してみよう!

など、テーマを与えて清掃を指示するようにします。

すると、「テーマに沿ったことを見つける」という意識が働き、気付きを得やすくなるのです。

もちろんリーダーには、「何が不具合の原因になり得るか?」を考えテーマを選定するスキルが必要です。このスキルが備わっていないと、的確なテーマを与えられないばかりでなく、「不具合の予防」といった結果に導けません。

リーダーには、「清掃時のテーマ選定力」が必要なのです。
意味を持った清掃が大切です。

単なるお片付けでない、人財育成という視点で5S活動を見つめてみませんか?


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マネジメントコンサルティング2部 部長
坂田 和則

国内外において、企業内外教育、自己啓発、人材活性化、コストダウン改善のサポートを数多く手がける。「その気にさせるきっかけ」を研究しながら改善ファシリテーションの概念を構築し提唱している。 特に課題解決に必要なコミュニケーション、モチベーション、プレゼンテーション、リーダーシップ、解決行動活性化支援に強く、働く人の喜びを組織の成果につなげるよう活動中。 新5S思考術を用いたコンサルティングやセミナーを行い、現在、企業支援数が190件以上及び年間延べ3,400人を越える人を対象に講演やセミナーの実績を誇る。

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