コラム

問題解決する組織 │改善を円滑に進める人財育成

目次

理想にはほど遠い!?『 問題解決しない組織』

問題解決しない組織

右の図は、
『問題が解決しない』
あるいは、改善が進まない・しない組織の
典型的なモデルとして作成しています。





ムダに気づかないのは当たり前

一般的に私たちは、日常業務の中のムダにほとんど気付いていません。
これは、過去からのやり方が正しいと思い込み「ムダをなくすのは私の仕事ではない。」という意識が強く働くからです。

ムダがあっても、苦労をしてそれをやりこなす、やり遂げた人をこれまで「カッコイイ~♪」とか、「できる人~♪」「スマートな人♪」と管理者や組織が評価してきたことに起因する現象です。

問題を細分化しないまま、解決しようとする

組織は常にコストをミニマムにしながら、成果を最大に引き出さなければならないため、トップダウンで「コスト削減」の号令が組織内部に出されることも珍しくありません。
これが当たり前の組織かもしれません。改善命令を受けた組織内部の人は、それに従って意識し始めます。意識とはその問題を識別して理解できることをいいます。

 ・Visual(視覚 → 見たことで理解)
 ・Auditory(聴覚 → 原理原則、論理で理解)
 ・Kinesthetic (身体感覚・情動感覚 → 体を動かしたり感情を得ながら理解)

つまりその問題が、どのように現れ(V)どのような理由で(A)自分自身がどのように影響するか(K)という、視覚的に(V)論理的に(A)感情や動作で(K)感じ取る事ができる状態です。
なお、VAKは人がモノゴトを理解する時の個々の特性と理解してください。

問題を意識することはとても重要で、改善活動のきっかけにもなる大切な瞬間です。
これをできると「改善をやらなきゃ!」と脳が考え始めます。
しかし、私たちは身の回りの問題をスマートに格好良く短時間で解決をしようとするあまり、その問題を細分化しないまま解決しようとします。
すると、表面的に問題が解決したかのように見えますが、いつかまた同じ問題が再発することになります。これでは成果もでません。

成果が出ないばかりか、更なる問題が・・・

取り扱う問題が細分化できないまま解決しようとしても成果は出ません。
この状況下においては、再発どころか発生サイクルから抜け出せなくなり、新たな問題発生を呼ぶことにも繋がりかねません。

改善成果が思うように出ないと、言いワケを考え始めます。
その中に有効な原因が隠れている場合もありますが、ほとんどの場合これに気付くことはありません。

また、成果が出ないとモチベーションが下降しはじめます。
そして焦りを感じ「やらなきゃ!」と意識を改め活動を再開しますが、同じループをグルグルと回るだけにとどまってしまいます。

この無限ループは、コストを高めると共に業務の質も悪化し、働く人のモチベーションさえも下げてしまいます。それを上げようとマネジメントすると、かえって反発が大きくなり良好なコミュニケーションまで取れなくなるケースも多くあります。

『 問題解決する組織 』

問題解決する組織

逆に『問題解決する組織』とはどのような組織なのでしょうか。

それは、改善が思うように進む組織(改善する組織)のことです。その特徴的な行動から話を進めていきます。



『問題解決する組織』はあいさつが上手い

あいさつとは、社会に個人が参画するためのパスポートのようなもので、コミュニケーションの基本です。ヒトは一人では生きてゆくことができず必ず仲間を求めます。
原始時代にタイムスリップしてみてください。
小さなウサギを捕らえて食べるのと、巨大なマンモスを捕まえて食べるのとでは、どちらの方が効率が良いでしょうか?

答えはマンモスです。マンモスの方が大きいので、量的には食事に困ることがありません。なので、小さなウサギを一人で捕まえるより仲間と共に巨大なマンモスを捕らえる方が、効率的であると人間は考えます。
もともと、人間には最も効率よく食べ物を得ようとする本能があります。
効率的に食べ物を得るには、仲間と協力しながら仲良く狩りをしなければなりません。

なぜなら、一人ではマンモスを捕らえることが困難であり、仲間と協力しなければ、十分な食事を得ることができなくなってしまうからです。
これでは死活問題に発展してしまいます。

もしあなたが仲間はずれになった場合、空腹への恐怖におびえたり、イライラして相手に攻撃的になったり、なにもせず従順的に仲間はずれを受け入れてしまったり、あるべき自分自身の姿からどんどんかけ離れ、ストレスが増大してしまいます。
人とは仲間はずれを嫌う動物なのです。
そこで私たちは、あいさつをすることで相手から返ってくる反応から、自分がその集団の仲間であるか否かを確認しています。

例えば、相手から気持ちの良い返事が返ってくれば「おお、私はこの集団の仲間だ!」と安心感が生まれストレスも軽減します。
しかしもし返ってこない場合、どのような心理状態になるか想像に容易いかと思います。

もちろん組織でも同じ事が言えます。
朝のあいさつで気分が悪くなれば、その日は気分が落ち込んだり、嫌な感覚が体のどこかに残ったりします。

このような心身状態で効率よく仕事ができるでしょうか?
気持ちよく改善をしようと思うでしょうか?

お互いの存在を承認するあいさつがしっかり出来ている組織は、コミュニケーションや協調性が羨ましいほど高く感じます。
いや、実際に高いのです。
経営層や管理責任者を含む管理職は、あいさつの原理原則を理解し実践しなければなりません。

『問題解決する組織』はムダを見つける教育が必須

『問題解決する組織』のループには、「ムダを見つける教育を受ける」というプロセスが追加されます。
前述のとおり、作業のムダは作業の中に隠れてしまい気付くことができません。

例えば、あなたの机の上を見てください。
日頃見慣れた風景が目に飛び込んくると思います。
しかし、実はその中にムダが数多く隠れているのです。
改善ファシリテーターが「デコボコ凸凹」と表現をする現象で、机の上に置いてある物が多ければ多いほど集中力が弱まり、入力・計算・照合・承認など各所でミスなどが発生しやすくなります。

物が多くなればなるほど机の上は平らでなくなり、デコボコ凸凹するようになります。
これはものづくり現場でも事務所でもまったく同じです。
人は自己防衛本能が優先的に無意識下で働いています。

地震が来たときに背中側にある棚が倒れてくるかもしれないと意識できるのは、常に無意識下で「背中側に棚がある。」と認識をしているからです。
無意識は通常気付くことのない物事でさえも感じ取っていますが、無意識なだけに私たちはそれを感じることができません。

凸凹が多い机の場合、無意識下では机の上の「デコボコ」さえも脳が反応して「書類が崩れてくるかも?」とか、「角で手をぶつけるかも?」と感じ取ってしまっています。
このような状況下では、人間の集中力や注意力が散漫となります。
これは、ポカミスが増える原因となります。
机の上の「デコボコ」をなくすだけでも、予防になります。

1秒でも1㎜でも「取りやすい、返しやすい」置き方を考える

生産現場では物の置き方が悪く、動作が多くなり集中が出来なくなることがあります。
物を置く場合でも、1秒でも1㎜でも「取りやすい、返しやすい」置き方をすることで、予防できるようになります。

改善には原理原則といった基本パターンがいくつも存在しています。
これを知ることで、改善の必要性をさらに意識できるようになります。

また教育には、自分の仕事と直結させるように説明することも大切です。
過去に「新5S思考術セミナー」を開講したとき、30代の男性からこのような感想をいただきました。

よく上司から机の上は綺麗にしろとか、片付けろとか言われていました。
自分では、どこに何があるかしっかり把握しているので、上司の言っている意味がよく理解できていなかったのが本音です。
でも、デコボコさえもミスやエラーの原因になるという話を聞いたら、すぐにでも机の上を片付けなければいけないと思いました。
すぐにやります。
セミナーでは、作業効率を上げるための具体的な内容と、その改善の背景にある原理原則を説明しました。

さらには、自らの業務エラーに直結する事例や比喩を交えながら講話を進め、本人が自覚・気付きを得る事でモチベーションの向上を促す工夫をしています。
「なぜその行動が必要か?」を説明することも大事ですが、自らの仕事の質に直結させる比喩話などを加えることで、よりモチベーションを上げることも可能です。

探してみよう!やってみよう!

自らの業務が楽になる事がイメージできると、人は改善に対するモチベーションが高まります。
「うちの若い奴らは改善意識なんて全くなくて、言わなければやらないよ・・・。」
とつぶやく管理職も多いようですが、若者が悪いのではなく、改善達成時のイメージを伝えきれない管理職側に原因があります。

改善達成時の「目で見るイメージ(Visual)」「耳で聞きながら考える原理原則(Auditory)」「ワクワクする感覚(Kinesthetic)」を合わせて解説をすることが重要です。

改善ファシリテーターは、常に物事を説明する場合、相手に対してVAKが脳内で活性化するよう説明をすることができる。
「探してみよう!やってみよう!」と、その気にさせるアプローチが、後の結果を大きく左右してくるのです。

フィードバック

フィードバックとは、相手が行動を起こそうとした瞬間に「おっ!いいね~」や「うん、その調子!」とポジティブな言葉と動作を合わせて相手に見せ(V)・伝え(A)・感じさせる(K)ことをいいます。

私たち人間は、行動することで様々な答えを見つけ出します。
そしてその答えを脳が記憶し行動の強化や弱化されることになります。

例えば、上司に怒られたとかクレームが発生したなどでイライラしている人がいるとします。
眉間にシワをよせ口を強く引き締め、胸のあたりがムシャクシャしている状態です。
この時、その人がたばこを吸う行動を取ったとします。
さて、たばこを吸った後の気分はどうなるでしょうか?

もし「気分も晴れスッキリ!」という状態に変化をしたのならば、一つ前の「たばこを吸う」という行動が強化されます。

行動が強化されると、人はまた同じ行動を取ろうとします。実はこれがたばこを止められなくする要因です。

逆に気分に変化が起きない、又は、さらに気分が悪くなるという結果を体験すると、一つ前の「たばこを吸う」という行動が弱化されます。
こうなると、人はまた同じ行動を取ることを止めます。

つまり、行動後に発生する感情が、一つ前の行動へフィードバックされ、継続して行うか止めるかといった影響を与えることになります。
人材育成をする場合でも、同じ原理原則がはたらきます。

改善を「やってみよう!」と思った時に良いフィードバックを与えると、相手はまたやろうという気持ちになります。そうすることで行動も強化されます。

また、終わった段階でも
「よく考えたな~すごい!」
「ほんと、お前らしいアイデアでユニークだね!」

などの良いフィードバックを与えることで、さらに強化することができます。
逆に「こんなつまんない改善なんかやってどうするの?」

「時間の無駄だよ」といった悪いフィードバックを与えると、思考や行動を弱化させるので注意が必要です。
上手くいっている組織は管理職がフィードバックをするための訓練を受けているケースが多いのです。

さらにムダに気付く

ヒトには学習能力が備わっており、一度経験したことは脳に記憶され、その記憶は他の似た事象に遭遇したとき、新しい事象を理解するために利用されます。
改善活動でも一度成功を体験すると、類似した事例や、さらに細かいムダを見つけるようになります。

このループを繰り返すことで継続的な改善が可能な組織に成長するのです。
「学ぶことを学んだ組織」が勝ち取れるチケットのようなものです。

経営者は、管理責任者や管理職に対しても、気付き(Awareness)を得るためのステージ(基盤)作りを確実に実行するようマネジメントすべきです。

改善ファシリテーターという存在

『問題解決する組織』には改善ファシリテーションの考え方が必要です。
改善ファシリテーションとは「改善を円滑に進める」という意味があります。
ビジネスモデル+改善モデル+ヒューマンリソースモデルの3つのモデルの統合が必要です。

しかし、これは理論であって、実践をしなければ意味がありません。
様々な困難(課題)に遭遇しますが、少しでも緩和する存在が改善ファシリテーターです。

改善ファシリテーターは、ビジネスモデルや改善モデル、そしてヒューマンリソースモデルの知識を持ち、その知識を駆使しながら改善に立ち向かう人たちのモチベーションをより高めてゆく事をミッションとしています。

改革や革新が進んでいる組織では
「このまま進めていいのか?」
「間違えていないか?」
「職場を変えることで、周りから嫌われないか?」
「ふりだしに戻っているのではないか?」など、
組織の成長を阻害するパターン化された不安に陥るケースが多いのです。

これらの不安は、組織の改革や革新の活動にブレーキをかけ、モチベーションのベクトルを「不安」な方向に向けてしまうという結果を生んでしまいます。
こうした負のスパイラルを断ち切るためにも、組織内には3つのモデルを実践できるリーダーが必要なのです。

改善ファシリテーターの育成や確保が『問題が解決する組織』への近道となります。
国内の中小企業から上場企業まで、国内外問わず育成され、その成果を出しつつあります。

『 問題解決する組織 』は未来から学ぶ

『問題解決する組織』の成長


『問題解決する組織』の成長を、現在・過去・未来の横軸とメリットとデメリットの縦軸に区分けしたのが上図です。
左下は「過去のデメリット」で、失敗・経験やトラウマを表します。
右下は「未来のデメリット」で、不安を表します。

この下部二つは、変革や革新をする行動に対してブレーキをかけてしまい、より何かを学ぼうとしても、心理的にネガティブさを感じ取るようになります。
左上は「過去のメリット」で、成功体験や自信を表します。
右上は「未来のメリット」を表し、夢やビジョン・あるべき姿を表しています。

ともにメリットではありますが、特に左上に注意をしてください。
左上は「過去の経験と知識からモノゴトを判断する。」傾向が強くなります。

「おおお、このクレームは過去にも出たな。おそらく原因は○○○○だよ。」と決めつけをしてしまうケースが良い事例です。

たしかに、短時間でモノゴトを判断するためには、過去に蓄積した「経験と知識」は重要です。
しかし、現時点で発生している問題が100%同じ要因から成り立っているかというと、あり得ない事です。
問題を構成する要因は、その都度、微妙に違いがありますが、その差異を過去の経験と知識というフィルターにかけ、差異を見逃したまま対策を立てると問題が再発します。

私たち組織が学ぶべき領域は右上の領域しかありません。
過去にとらわれず、未来への不安も払拭するようなモチベーションを育て上げ、時には過去の経験と知識さえも邪魔をするからと、仕組みを一から構築し直すことも行っています。

そしてその背景(context)には、常に変化を受け入れる人材を継続的に育成していることを怠っていません。
経営にとってPDCAサイクルを回すことも大切です。
しかし多くの場合、過去のデータや実績から未来を決めようとしがちです。
これでは、いつまで経っても新しい時代に風を吹かすことができません。

これから先の未来で成果を出し続けるためには、未来を担う人材育成を怠らないことが必要ではないでしょうか。
その際には、是非『改善ファシリテーション研修』をご活用して頂きたい。共に『未来を担う人材』を育てようではありませんか。

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坂田 和則さん画像
マネジメントコンサルティング2部 部長
坂田 和則

国内外において、企業内外教育、自己啓発、人材活性化、コストダウン改善のサポートを数多く手がける。「その気にさせるきっかけ」を研究しながら改善ファシリテーションの概念を構築し提唱している。 特に課題解決に必要なコミュニケーション、モチベーション、プレゼンテーション、リーダーシップ、解決行動活性化支援に強く、働く人の喜びを組織の成果につなげるよう活動中。 新5S思考術を用いたコンサルティングやセミナーを行い、現在、企業支援数が190件以上及び年間延べ3,400人を越える人を対象に講演やセミナーの実績を誇る。

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