ISO45001とは|労働安全のISO取得のメリット・手順を詳しく解説
労働災害は、職場での事故や健康被害を引き起こし、従業員や企業にとって大きな損失をもたらします。従業員の安全と健康を確保するためには、労働安全に関するマネジメントを徹底しなくてはなりません。本記事では、労働安全に関するマネジメント規格であるISO45001の概要、取得の具体的な手順やメリットについて詳しく解説します。
労働安全について定めたISO45001
労働安全について定めたISO(国際規格)はISO45001です。ISO45001は労働災害のリスクをなくすマネジメントの国際規格として導入されています。
国内で労働災害は、年間約13万件(令和4年)発生しています。(出典:令和4年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省)自社でも発生する可能性があるため、現場の状況を把握した上で対策が必要です。
ISO45001は大企業から中小企業までの全ての組織を対象に、労働安全マネジメントの計画から運用、パフォーマンス評価までの一連の流れに関する内容が含まれています。
ISO45001を取得するメリット
ISO45001を取得するメリットは以下の通りです。
- 労働災害のリスク低減
- 従業員の満足度・安全意識の向上
- 社外からの信頼性向上
ISO45001を取得することで、労働災害を防ぐだけでなく、従業員の安全に対する意識向上や社外からの信頼性を高めることが期待できるなど、様々なメリットがあります。
労働災害のリスク低減
ISO45001の内容は危険がある箇所の特定、対策の考え方や従業員への教育、緊急対応などがまとめられています。労働災害を防ぐためのマネジメント方法を導入することができるので、労働災害が発生するリスクを低減することができます。
従業員の満足度・安全意識の向上
ISO45001には、労働環境の整備や従業員の健康管理、コミュニケーションの改善といった、職場環境の整備に関する内容が含まれています。そのため従業員にとって、より働きやすい労働環境となるので、従業員の満足度の向上が期待できます。またリスクアセスメントの徹底や、従業員への安全に関する教育も含まれているため、安全意識を高めることも期待できます。
社外からの信頼性向上
ISO45001は国内だけでなく、国際的に認められたマネジメント規格です。そのため、取得することで、労働安全マネジメントが国際的な水準であることを示せます。国内外の取引先やステークホルダーから、 労働環境の安全性を徹底している企業として評価され、信頼を高めることが期待できます。「安全を重視した会社である」と求職者にもアピールできるため、採用の面でも効果があります。
ISO45001取得までの手順
ISO45001を取得するまでのステップは以下の通りです。
- 必要な書類・社内システムの構築
- 内部監査・マネジメントレビュー・是正処置
- 第一段階審査
- 第二段階審査
各ステップでの実施内容を詳しく解説します。
必要な書類の作成・社内システムの構築
ISO45001の審査前に、リスク管理計画やマニュアルなどの書類、社内のマネジメントシステムの構築を実施します。ISO45001の審査対象にマネジメントシステムを運用した実績も含まれるため、マネジメントシステムを導入していない場合は、構築から始める必要があります。
マネジメントシステムの構築に加えて、運用の手順をまとめたマニュアルの作成も必要です。従業員がマニュアルを見ながら操作・運用できるように細かく記載しておきましょう。
内部監査・マネジメントレビュー・是正処置
審査に向けた準備ができたら、内部監査員による内部監査と、経営陣によるマネジメントレビューを実施します。内部監査とマネジメントレビューの結果をもとに、必要な是正を行い、構築したマネジメントシステムやマニュアルの改善を実施し、第一段階審査に備えます。
第一段階審査
内部監査・マネジメントレビューを経て、第一段階審査の受審を申し込みます。第一段階審査では、リスク管理計画やマニュアルなどの書類が要求事項を満たしているかどうかが審査されます。(第一段階審査は書類の審査が中心ですが、審査機関・審査員によっては現場を視察することもありますが、現場審査は主に第二段階審査で行われます。)
第二段階審査
第二段階審査では、第一段階審査をもとに現地審査が実施されます。文書に記載されている内容通りに運用できているかを、実際の現場を見て審査します。現地審査では管理職だけでなく、現場担当者やアルバイトやパートなど、現場の従事者が対象であり、ランダムに労働安全に関して質問されるため、誰に質問されても答えられるように社内教育が必要です。
ISO45001取得のために取り組むべきこと
ISO45001は、必要な書類の作成やマネジメントシステムの構築など、取得に向けて実施しなくてはならない項目が多くあります。そのため、社内全体を巻き込み取り組まなくてはなりません。ここでは社内全体でISO45001取得に向けて取り組むべきことを説明します。
自社で「働く人」全員が対象
ISO45001は社員だけでなく、契約社員やアルバイト、請負業者、外部委託業者などの全ての「働く人」が対象です。自社の一部の人が労働安全について理解しているのではなく、全従事者が理解できるように仕組みづくりすることが求められています。全従事者が労働安全について理解することで安全意識が高まり、社内の安全文化の醸成に繋がります。
全社をリードできるトップが不可欠
ISO45001の取得までには、時間と費用がかかります。審査に向けた書類の作成やルールの浸透など、全社で取り組む必要がある内容も多くあります。そのため取得に向けて経営層やマネージャーなどのトップがリードし、全社を統制することが不可欠です。
PDCAサイクルを回して改善し続ける
ISO45001は、PDCAサイクルの考えをベースに設計されています。「改善計画を立てて実行し、結果からさらに改善を進める」PDCAサイクルを回し続けることが求められています。一度認証を受けたら終わりではなく、認証後も引き続き改善活動を実施し、より良い職場環境を目指していく必要があります。
まとめ
ISO45001は労働安全のマネジメントに関する国際規格です。取得することで、仕組みを自社へ導入し、労働安全を徹底した企業であると信頼を高めることが期待できます。
当社ではISO45001取得支援をはじめとする、労働安全マネジメントに関するコンサルティングを通じて、認証取得だけでなく、従業員の安全意識の向上や安全文化の醸成につながる人財アプローチをご提供しています。災害のリスクを見つける時に、潜在的要因に気づきを促す支援を行います。もし災害が発生してしまっても、災害発生要因を徹底的に洗い出し、再発防止に繋げる人材育成もご支援します。