【EcoTopics】ゾーニングの意義と補助金活用について—地域に資する再エネ導入調査—

目次

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、日本全体で再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の大量導入が求められる中、そのための調査として「ゾーニング」が注目されています。環境省の補助事業の対象にもなっており、地方公共団体にとっても有意義な調査です。本稿では、このゾーニングの概要や意義、さらに具体的な補助金の活用について、解説いたします。

ゾーニングの概要と意義

ゾーニングの概要

ゾーニングとは、GISソフトを用いて、再エネの導入が可能な区域と不可能な区域とをエリア分けした「ゾーニングマップ」を作成する作業です。

ゾーニングマップのイメージ




【再エネゾーニングによるエリア分けの例】
 ①法規制等により設置が困難な「保全エリア」
 ②法的調整が必要な「調整エリア」
 ③導入促進が可能な「促進エリア」

ゾーニングの意義

2012年に固定価格買取制度が施行されて以来、太陽光発電を中心に再エネは普及しましたが、併せて自然災害等、地域でのトラブルも増加しました。脱炭素化を進める上では、このような地域でのトラブルを回避しながら、適切に再エネを導入することが必要不可欠です。

こうした中、ゾーニングは災害警戒区域等の公表データだけでなく、自然環境調査等の結果を反映したり有識者や地域住民の意向を反映したりしながら、再エネ種別ごとに適切なゾーニングマップを作成するため、地域に資する再エネの導入に役立つと考えられます。

想定される調査

自然環境の調査としては、主に以下に挙げられるものが想定されます。このうち、⑦電波障害および⑧シャドーフリッカーは、風力発電の導入に係る調査です。
【主な自然環境の調査】
 ①騒音
 ②動植物
 ③水生生物
 ④水中生物
 ⑤景観
 ⑥地形地質
 ⑦電波障害
 ⑧シャドーフリッカー(晴天時に風力発電設備の運転に伴い、ブレードの影が回転して、地上部に明暗が生じる現象)

「促進区域」とゾーニングの活用

地球温暖化対策の推進に関する法律によれば、市町村は、地方公共団体実行計画において再エネの利用促進等の施策を行う際に、地域脱炭素化促進事業の対象となる「促進区域」を定めるよう努めるものとされています。この促進区域を設定することにより、地域に資する再エネ設備の導入を促し、それに伴う地域経済の活性化が期待されます。

  促進区域設定の位置づけ


出典:環境省「地域脱炭素のための促進区域設定等に向けたハンドブック(令和5年3月)」 

促進区域の設定

環境省のハンドブックによれば、促進区域の主な抽出方法として想定されているのは(1)広域的ゾーニング型(2)地区・街区指定型(3)公有地・公共施設活用型(4)事業提案型、の計4種類です。前述のゾーニングの結果を活用するのは(1)の方法です。
また促進区域の設定にあたり、都道府県の基準が定められている市町村においては、その基準に基づくことが求められますが、神奈川県小田原市のように県基準が定められていない市町村による促進区域設定の事例も存在します。
(参考:小田原市HP, 小田原市気候変動対策推進計画 第3章 市域における脱炭素化施策【緩和策

促進区域の抽出方法


出典:環境省「地域脱炭素のための促進区域設定等に向けたハンドブック (令和5年3月)」

補助事業の活用と展望

補助事業の概要

ゾーニングの実施に活用できる補助事業は、環境省の「地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業のうち、(2)地域共生型再エネ導入促進事業」における「①再エネ促進区域の設定等に向けたゾーニング支援」です。補助事業の執行団体は一般社団法人地域循環共生社会連携協会であり、実施期間は令和3~7年度となっておりますが、後述の理由から令和7年度以降も何らかの補助制度が設けられると考えられます。

ゾーニングを支援する補助事業の概要


出典:環境省HP 令和6年度環境省重点施策集, 地域再エネの最大限導入のための地方自治体の計画づくり支援(地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業【エネ特】) 

ゾーニング実施後の展望

上記①の支援とは別に「②再エネ促進区域等における地域共生型再エネ設備導入調査支援」が、令和6年度から新設されます。促進区域内における再エネ導入を促す支援事業が新たに追加されたことから、促進区域の設定にかかるゾーニングの補助制度は、今後も継続することが考えられます。

まとめ

ゾーニングは地域に資する再エネを導入する上で重要な調査であり、また有望な補助事業の活用についても解説いたしました。地方公共団体のほうで準備を進めるにあたり、具体的な予算編成や仕様検討等でお困りの際は、ぜひ当社へご相談ください。

(令和6年1月 公共コンサルティング部 佐藤)


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