【EcoTopics】多様なPPAモデルのご紹介

目次

近年、温室効果ガス排出削減に向け、我が国を含めた世界各地で再生可能エネルギーの比率を高めるため電力の切り替えや再エネ電力を利用する動きが加速しています。再エネ発電設備から電力を調達する方法としては、主に自己所有、リース、PPA(Power Purchase Agreement(電力販売契約))の3つが挙げられます。中でも、国の交付金や補助金が充実しており、かつ需要家の費用負担なく進められるPPAの導入が拡がってきています。

本コラムでは、多様なPPAモデルについて情報をご紹介いたします。

PPAの種類

オンサイトPPA

オンサイトPPAは、発電事業者が、需要家(電力を使用する者)の敷地内(建物屋根など・オンサイト)に発電設備を設置し、発電電力を需要家に供給するものです。発電設備の設置費用や維持管理費は発電事業者が負担し、発電設備は発電事業者が所有し、維持管理します。需要家は発電設備の設置場所を提供し、発電事業者との間で決定された電気料金単価に基づき、実際の電力供給量に応じて購入料金を発電事業者に支払います。なお、固定価格(PPA料金単価)の決め方は、発電設備の導入費用や契約期間の維持管理費などを合計した総費用に、発電事業者の利益を上乗せして、想定される発電量や自家消費量から単価を計算する方法が一般的です。

オンサイトPPAの契約形態

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA実践ガイドブック(2023年版)』

メリット
デメリット

・初期費用をかけずに太陽光発電を導入できる
・メンテナンスや維持管理の責任がない
・電力会社から電気を買うよりも電気料金が安くなる
・自家消費した電力には再エネ賦課金が不要になる
・BCP対策の非常用電源として活用できる

・完全自家消費型に比べて電気料金の削減効果は低い
・長期契約中は交換・処分ができない
・契約期間満了後のメンテナンスは自己負担になる

フィジカルPPA(オフサイトPPA)

オフサイトPPAは、需要家の敷地外(遠隔地・オフサイト)に発電設備を設置するモデルです。このうち、発電事業者から電力と環境価値を購入するのがフィジカルPPAです。フィジカルPPAは、送電線を介して電気が送られるため、需要家は電力と環境価値の購入料金に加え、託送料を支払う必要があります。電気事業法の規定により、送電線を介して電力を販売する事業は、国に登録した小売電気事業者だけにしか認められていないため、同事業者を介在させる必要があり、同事業者への手数料が発生します。

フィジカルPPAの契約形態

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA実践ガイドブック(2023年版)』 

メリットデメリット

・初期費用をかけずに太陽光発電を導入できる
・メンテナンスや維持管理の責任がない
・自社の敷地面積にとらわれず発電量が確保できる
・複数の事業所に送電できる
・低圧の発電所を使用できる(自己託送は低圧使用不可)

・電気料金の削減効果が低い
・小売電気事業者を仲介するため小売手数料や再エネ賦
課金がかかる
・電気料金に加えて託送料金がかかる
・長期契約中は交換・処分ができない

バーチャルPPA(オフサイトPPA)

オフサイトPPAのうち、環境価値だけを取引するものをバーチャルPPAと呼びます。バーチャルPPAの場合、発電所で作られた電気は卸電力市場などに売却されます。実際に電力の取引を行わないことから、バーチャルPPA(仮想の電力購入契約)といいます。

ーチャルPPAの契約形態(小売電気事業者が仲介)

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA実践ガイドブック(2023年版)』

メリット  デメリット

・電力会社との契約を変更する必要がない
・地域に関係なく、複数拠点に環境価値を提供できる

・電気代削減効果は見込めない
・電気を扱わないため、非常用電源としての効果は期待で
きない

自己託送によるフィジカルPPA(組合方式)

2021年11月の法改正により可能になった第三者所有型の自己託送モデルです。改正前は、自己託送を行う場合には、第三者が保有する発電所からの送電は認められていませんでしたが、改正後は、発電事業者と需要家が組合を設立し、発電所を新設するなどの要件を満たせば、他社の発電事業者が所有する発電所からの自己託送も可能になりました。なお、自己託送(フィジカルPPA)では、電気事業法上、既存の設備の利用は認められていません。

フィジカルPPAの契約形態(自己託送制度を適用)

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA実践ガイドブック(2023年版)』

メリット  デメリット

・初期費用がかからない(発電事業者が負担する場合)
・再エネ賦課金がかからない
・需要家の敷地面積にとらわれず発電量が確保できる
・必要な電気量に応じた発電設備を設置できる


・自己所有型の自己託送に比べると電気料金の削減効果は低い
・高圧・特別高圧に限られる
・送電先が一か所に限定されるためグループ全体のCO2削減には向かない
・計画通りに発電できない場合にはペナルティ料金(インバランスコスト)が発生する
・非常用電源として活用できない可能性がある

自治体における昨今の先行事例

オフサイトPPAによる電力供給 鹿児島市「かごしま環境未来館」

  • やまとソーラープラント株式会社とネクストパワーやまと株式会社は、鹿児島市「かごしま環境未来館」とオフサイトPPAを締結。
  • 鹿児島市五ヶ別府町の遊休地(鹿児島市所有)に太陽光発電所を建設し、ここで発電した電力が鹿児島市城西の同施設で使用される。

オフサイトPPAの仕組み図

出典: 大和電機グループHP NEWS(2021年9月29日)

都有地を活用したオンサイト・オフサイト併用型PPA

  • 東京都は PPA 事業者に都有地を賃貸する。
  • PPA 事業者は都有地に太陽光発電設備を設置し、運営の上、東京都農林水産振興財団 青梅庁舎で自家消費する分については、青梅庁舎に再生可能エネルギー電気を供給する。(オンサイトPPA)
  • 青梅庁舎で自家消費する分以外の余剰の再生可能エネルギー電力については、財団の 立川庁舎で利用。(オフサイトPPA)

事業スキーム図(都有地を活用したオンサイト・オフサイト併用型PPA)

出典:東京都環境局報道発表資料(2023年2月17日)

以上、様々なPPAモデルをご紹介いたしました。ぜひ参考にしていただけると幸いです。

(令和5年8月 公共コンサルティング部 小西)



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