【EcoTopics】小水力発電の仕組みと導入の流れ

目次

再生可能エネルギーとして、太陽光発電や風力発電に注目が集まる中、小水力発電という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。この小水力発電はとても有意義な再生可能エネルギーであり、その導入については、経済産業省資源エネルギー庁が公表している「令和3年度水力発電の導入・運転人材育成研修テキスト」で、約500ページにわたり詳しく解説されています。

本コラムでは、上記テキストを参照しながら、水力発電の仕組み、小水力発電の特徴、小水力発電導入の流れの3点について概要を紹介します。

1.水力発電の仕組み

水力発電の仕組み

出典:経済産業省資源エネルギー庁・財団法人新エネルギー財団「ハイドロバレー計画ガイドブック」

一般的に、水力発電は標高が高いところから低いところへ水が流れる際のパワーを利用して発電します。河川の取水地点に取水用の堰を設け、そこから水路を経て下流側の発電地点まで導水し、発電に用いた水をまた河川へ戻します。

この時、発電に用いる水の量(使用水量)や、水槽から水車地点までの落差のうち摩擦による損失等を除いた有効落差が高ければ高いほど、より多くの電力を得られます。具体的には、水力発電の発電出力は以下の公式によって算出されます。

発電出力(kW)=使用水量(m3/s)×有効落差(m)×重力加速度(=9.8)×総合効率(=60~80%)

例えば、ある計画地点では、1.5 m3/sの流量を使用でき、かつ有効落差が50m得られ、総合効率は75%になると仮定します。この場合、1.5×50×9.8×0.75≒約550kWの発電設備が作れる見込みとなります。これから小水力発電の導入を検討するうえでも、まず基本の考えとして、流量と落差がなるべく大きい地点を探すことが大事です。

2.小水力発電の特徴

小水力発電の概要図

出典:経済産業省資源エネルギー庁・財団法人新エネルギー財団「ハイドロバレー計画ガイドブック」

明確な定義はありませんが、最大出力が1,000kW未満の水力発電設備のことを小水力発電と呼ぶのが、一般的な解釈です。河川での導入事例が一般的ですが、農業用水路や上下水道設備などへ導入した事例もあります。

小水力発電には、以下のようなメリットがあります。

  • 太陽光発電や風力発電と比べて、日中安定して発電できる。
  • 100年以上運転し続けている事例があり、長期間発電できる。

一方で、以下のようなデメリットも挙げられます。

  • 導入できる地点が限られる。
  • 法制度や地域合意などにより、導入に時間を要する。

以上のような特徴がありますが、ポテンシャルがある地点であれば、長期にわたってエネルギー自給が実現できるものです。

次節では、導入のために具体的にどのような手順が必要であり、とりわけ初期の段階では何をすればいいのかを解説します。

3.小水力発電導入の流れ

小水力発電の導入のためには、おおまかにポテンシャルの有無をご確認していただき、その後コンサルタントやエンジニアリング企業等と相談しながら、5~7年ほどかけて準備を進めていただくことになります。ポテンシャルがあるかどうかは、環境省の再生可能エネルギー情報提供システム[REPOS(リーポス)]というサイトを活用し、地元や事業所付近にポテンシャルが認められるエリアがあるかどうかを幅広く確認していただくことを推奨します。

水力発電事業実施の流れ

出典:経済産業省資源エネルギー庁「令和3年度水力発電の導入・運転人材育成研修テキスト」

上図の水力発電事業実施の流れによれば、「事業立案段階」では小水力発電事業に取り組む目的を整理したうえで候補地点を机上調査し、「事業実施段階」で現地調査や基本設計などのFS調査を経て事業性を判断し、「事業建設段階」で詳細設計を経て工事着工に至ります。そして晴れて発電所の完成後、設備を維持管理しながら何十年にわたって運用します。

計画開始から発電所の運転開始に至るまで、順調に進んだとしても最低5年、長ければ10年近くの期間がかかるといわれています。導入の期間が長ければ長いほど、人件費等の費用もかかります。小水力発電は規模が小さいと考えられがちですが、実際は相応規模のインフラ構造物と言えます。ゆえに初期投資額は高額になりがちであり、最低でも2~3億円、規模によっては十数億円発生する可能性もあります。

小水力発電設備を資産として運用し続けるためにも、綿密な事業計画のもと、必要に応じて支援制度や補助金を活用し、適切に事業性を判断しながら導入することが重要です。2023年4月現在、固定価格買取制度(FIT制度)により、1,000kW未満の小水力発電の売電単価は、2025年度分までは当初からの単価が設定されることが明らかになっています。小水力発電は当面の間、FITを活用するのが最も経済性が良くなると考えられますので、現行の売電単価が続く限りは積極的に活用したいところです。

中小水力発電のFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格

出典:経済産業省HP 1.2023年度以降の買取価格等 (4)中小水力発電

またFIT制度と併用できる補助金を活用することで、数百~数千万円の補助を受けられる場合もあります。一般財団法人新エネルギー財団 は、毎年「水力関連補助事業」という水力発電の事業性評価に必要な調査・設計を補助する事業を行っていました。当該事業のサイトは、4月4日時点でメンテナンス中ではありますが、今年度も実施される可能性が高いです。サイトが公開されましたら、適宜活用をご検討ください。

4.まとめ

小水力発電は課題が多いですが、それに見合うほどの恩恵が得られる再生可能エネルギーです。長期的に見れば経済性にとても優れ、また地域のエネルギー自給の観点からも有意義な電源であると言えます。地元や事業所付近にポテンシャルがある河川があれば、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。そして多くの方がつまずきやすいであろう初期の事業立案段階において、お困りの際はぜひ当社までご相談ください。

(令和5年4月 公共コンサルティング部 佐藤)


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